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現在直面している IT の課題に対処することは重要です。Red Hat Summit や AnsibleFest では、AI を対象とするオープンソース基盤モデルプラットフォームの提供から、新しいコードとしての IT ポリシーまで、多種多様なテクノロジーニーズに対する当社の取り組みを紹介しました。しかし、今日という日は一瞬で、気付けば明日になっているのが現代です。そのような中で、まだ具現化されていないテクノロジーの難題にはどのように対処できるでしょうか。幸いなことに Red Hat は、未来を計画し、創造するための実績豊かな手段を持っています。それがオープンソースのコミュニティとプロジェクトです。

現在、多くの人々は AI/ML を未来のテクノロジーとして認識しています。確かに多くの組織は、デプロイメントや本番稼働の段階ではなく、戦略策定やプランニング、構想立案などの初期段階にあります。しかし、オープンソースの世界は異なります。Red Hat はすでに先を見据え、AI がもたらす次の波にどう対処するか検討しています。

AI の今後は大きなトピックで、それだけでもカンファレンスの基調講演を時間いっぱい使い切ることができますが、ここではオープンソースプロジェクトで取り組まれている以下の 3 つの領域に焦点を絞っています。

  • 民主化
  • サステナビリティ
  • 信頼性

これらの課題に対処するか、少なくとも対処を開始することで、その他の AI 戦略における複雑さが多少なりとも緩和され、達成しやすく感じられるのではないでしょうか。

民主化

AI 関連で使用される用語に関して率直に言うと、カギ括弧やアスタリスク付きで示される「オープン」モデルという言葉を見ると、顔をしかめずにはいられません。誤解しないでください。そのようなモデルは AI 業界において不可欠です。しかし、オープンソースという意味での「オープン」ではないのです。この場合の「オープン」は、さまざまな制限やルールがあるものの、使用に対して開かれているという意味でのオープンです。しかし、コントリビューションに対してオープンではなく、またトレーニングデータセットや重み付けについてもオープンではありません。

これは、Red Hat が IBM Research と共同で取り組んでいる課題であり、その取り組みは今後も継続します。InstructLab と並行して、IBM Research は Granite 言語およびコードモデルにオープンソースの Apache ライセンスを適用するようになりました。これは非常に大きな動きですが、オープンソースライセンスで管理されるモデルを持つことが特別なのではありません。誰でも InstructLab を通じてこのモデルにコントリビュートし、改良できることが特別なのです。

そして何より、「自分の」AI モデルを作成できます。釣り専用チャットボットを構築したいですか?コントリビューションを活用して ChatGoFish を作成しましょう。極めてニッチなテクノロジーに特化したトラブルシューティングボットを作成したいですか?InstructLab で作成できます。本当の意味でオープンソースの原理を AI モデルに適用すれば、可能性は無限に広がります。Red Hat はそれを実現します。

サステナビリティ

率直に言うと、モデルのトレーニングと AI 推論は電力を大量に消費します。国際エネルギー機関は、2026 年までに AI 業界の電力需要が 10 倍に増加すると予想しています。コインマイナーと張り合うほどの電力を消費するという以外で、これは何を意味するのでしょう。

この課題に対処できるオープンソースソフトウェアが必要だということです。AI を導入すると、ほぼ例外なく大量の電力を消費することになりますが、これには賢く対処できます。Red Hat は、最新のエンタープライズ IT に伴うこの課題に対し、Kepler プロジェクトを活用した取り組みを開始しており、クラウドネイティブ・アプリケーションとインフラストラクチャの二酸化炭素排出量およびエネルギー効率に関する知見の提供に貢献しています。Kepler は現在、テクノロジープレビュー機能として Red Hat OpenShift 4.15 で使用できます。

しかし、オープンイノベーションの実力をもって、Kepler を CPU だけでなく GPU の電力消費も監視できるツールに進化させることができれば何が起きるでしょうか。

Red Hat は今まさにそれを実行しています。つまり、ML モデルがトレーニングと推論で消費する電力を Kepler を使用して計測しています。これにより、従来の IT と AI フットプリントの両方の電力消費を総合的に把握できます。これもオープンソースで実現されています。

信頼性

魅力的な新テクノロジーが例外なくそうであるように、AI ワークロード、モデル、プラットフォームについてもセキュリティフットプリントを効果的に保護し、強化できなければなりません。セキュリティが欠落したイノベーションは単なる「リスク」であり、企業とオープンソースコミュニティはこれを最小化する必要があります。

ソフトウェアの場合、サプライチェーンと来歴は、よりセキュアなエクスペリエンスを提供する上で重要です。つまり、ビットがどこから来たのか、誰がそれをコード化したのか、本番機能に組み込まれる前に誰がアクセスしたのかを明確に把握する必要があります。Red Hat が主導する sigstore プロジェクトは、アプリケーション開発のあらゆる段階で使用するオープンソースコードの信頼性を証明するために利用できます。

これと同等のレベルで事前検討、規律、厳格性を AI モデルに適用する必要があり、そのために Red Hat とオープンソースコミュニティは、セキュアなサプライチェーンツールを使用した AI BOM (Bill of Materials) の作成に取り組んでいます。そうすることで、モデル構築に関する保証を強化できます。

信頼性の概念は、セキュリティと密接に関係しています。ユーザーや組織は、どのようにしてその AI モデルやワークロードが将来を託すだけの信頼に足ると判断するのでしょうか。そこで注目されるのが TrustyAI です。TrustyAI を使用することで、テクノロジーチームは AI モデルの正当性を理解し、問題となる可能性のある動作に注意を向けることができます。

ここで紹介した例から、今後に向けた未来の AI のアクセシビリティ、サステナビリティ、セキュリティの強化に、どのようにオープンソースが貢献しているか明らかになったのではないでしょうか。そのいずれも、新しい考え方を促すオープンソースコミュニティとの協働なしでは実現が難しく、Red Hat は最前線でこのようなテクノロジーの発展を牽引していることを誇りに思います。


執筆者紹介

Chris Wright is senior vice president and chief technology officer (CTO) at Red Hat. Wright leads the Office of the CTO, which is responsible for incubating emerging technologies and developing forward-looking perspectives on innovations such as artificial intelligence, cloud computing, distributed storage, software defined networking and network functions virtualization, containers, automation and continuous delivery, and distributed ledger.

During his more than 20 years as a software engineer, Wright has worked in the telecommunications industry on high availability and distributed systems, and in the Linux industry on security, virtualization, and networking. He has been a Linux developer for more than 15 years, most of that time spent working deep in the Linux kernel. He is passionate about open source software serving as the foundation for next generation IT systems.

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