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過去 5 年間の Google Trends を見ると、「hybrid cloud」と「public cloud」という検索ワードは、常に互いの順位を追い抜き追い抜かれながらも、同程度の注目を浴びていることがわかります。

この傾向は、パブリッククラウドに完全特化したアプローチのリスクについて大半の企業が同時期に得た気付きとも、矛盾せずに合致します。私たちが接触した大半の CIO は現在、オンプレミス環境とパブリッククラウド環境にまたがる包括的なクラウド戦略を検討しているか、すでに実施を始めていると言います。この戦略とはつまり、ハイブリッドクラウドです。  

ハイブリッドクラウドが何 (WHAT) であり、どのように (HOW) 実現可能かの詳細に入る前に、まずは「なぜ」(WHY) ハイブリッドクラウドを検討すべきかを明らかにしましょう。

すべてはアプリケーションの移植性とコスト削減のため

事業部門の責任者や役員レベルのリーダーは、あらゆるクラウド・テクノロジー (パブリック/プライベート/ハイブリッド/マルチ/ポリ・クラウド) を検討する理由について明快な答えを持っています。

トップライン (売上) という観点からは、クラウドへの投資はビジネスに柔軟性を与えることで、競合の脅威への対応や、新たな顧客向けサービスの創出、規制や標準への準拠などの実現につながります。損益計算書の反対側に視点を移せば、クラウド・テクノロジーはほとんどの場合においてボトムライン (最終損益) を改善できるため、運営費のより厳密なコントロールが可能となります。

一方で、テクノロジー分野のリーダーとのクラウドに関する商談の内容は、もう少し幅広い内容をカバーする傾向があります。開発マネージャーは開発者の生産性向上 (より短時間で、より多くの本番稼働可能なコード) に強くフォーカスしますが、運用マネージャーは総所有コスト (TCO) とリソース使用率に注目しています。

DevOps チームはその性質上、常にアプリケーションの開発とデプロイのはざまに身を置いているため、 アプリケーションの移植性が観点の軸となります。 移植性とはつまり、「アプリケーションはデプロイ先の環境とは独立してビルドされ、さまざまな環境 (オンプレミス/プライベート/パブリッククラウド) にわたりシームレスに移植可能であり、エンドユーザーに対する透明性を持つ」という、シンプルかつパワフルな考え方です。

これを実現することは、言葉で表すほど簡単ではありません。

ハイブリッドクラウドとは何か

ハイブリッドクラウドという言葉の定義には、あらゆる発展途上のテクノロジーについて回る複雑性が存在します。ハイブリッドクラウドの導入パターンを踏まえれば、業界が少しずつ 1 つの定義へと向かってまとまりつつある様子を見出だせます。一方で、真の「ハイブリッドクラウド」の実現へ向けた進行具合に関しては、さまざまな企業がほぼ偏ることなく、さまざまな段階にいます。

たとえば、2017 年に公開された 451 Research 社の Voice of the Enterprise レポート によると、クラウド・トランスフォーメーションに取り組む企業はおおむね 「3 分の 1 ルール」に適合しているといいます。まず、およそ 3 分の 1 は単一のパブリッククラウド・プロバイダーのみを利用しています。このモデルは小規模な環境では効率性な場合もある一方で、エンタープライズ規模の大企業になるとロックインのリスクが生じます。

次の 3 分の 1 はマルチクラウド戦略を有するものの、ワークロード同士で正式なインテグレーションやオーケストレーションは行われていません。これらの企業は、複数のパブリッククラウド・プロバイダーや、プライベートクラウド・プロバイダー、または両社を組み合わせて効果的にリスクヘッジを行っていますが、ロックインのリスクを避ける代わりに、環境が複雑化しています。

最後の 3 分の 1 は、真のハイブリッドクラウドのパイオニアです。これらの企業は、クラウド間の境界を超えたワークロードの移行を求めているか、より優れた方法として、ワークロードに関して一定の移植性、インテグレーション、オーケストレーション、および一元管理を実現しています。これは、Red Hat が真のハイブリッドクラウドとして描いているビジョンとかなり一致するアプローチです。

いずれのアプローチにもメリットがあるようですが、さらに詳しく見ていきましょう。 Enterprise Strategy Group の Mark Peters 氏によれば、パブリッククラウドを使用中の企業の 40% が、1 つ以上のワークロードをパブリッククラウドから撤収しています。あらゆるアプリケーションがクラウドで価値を生み出すように作られているわけではありません。そして、どのアプリケーションがどのタイプのクラウドに適しているかは、簡単に割り出せるものではありません。これが正しくてこれは誤りというような、明確な答えがあるわけではないのです。しかし Red Hat では、クラウド戦略の構築方法に関して言えば、正しいアプローチと誤ったアプローチが存在すると考えます。

ワークロードに合わせたクラウド戦略

Red Hat がお客様のハイブリッド導入を支援する際に取るアプローチには、3 つの原則があります。

第 1 に、はじめから柔軟性と選択肢の確保を考慮して構築されたハイブリッドクラウド・インフラストラクチャを用意します。ハイブリッドクラウドは結果論的に出来上がるものではなく、さまざまな構成要素 (Red Hat Enterprise Linux、Red Hat Virtualization、Red Hat OpenStack Platform、 Red Hat Storage など) を組み合わせてインフラストラクチャを構築する際の土台となる、基礎的なデザイン原則であるためです。

第 2 に、開発者によるクラウドネイティブ・アプリの構築とデプロイを支援する開発プラットフォームを組み立てます。Red Hat Enterprise Linux がエンタープライズ向けオープン・オペレーティング・システムの決定版であるとすれば、Red Hat OpenShift Container Platform は、ハイブリッドクラウド環境の全体にわたって従来型アプリと先進的アプリをつなぐための共通プラットフォームとして選ぶべきソリューションであると言えます。

OpenShift には、数多くの優れたミドルウェア・ソリューションをデプロイすることが可能です。さらに、ストレージなどのインフラ要素が統合されているため、手間とコストがかかるアプリケーションの作り直し (リライト) やダウンタイムを伴わずに、アプリケーションの移植性を実現できます。

最後に、ハイブリッドクラウドの価値を完全に実現するためには、ワークロードのオーケストレーションを行うための運用管理ツールや、日常業務を単純化するための自動化ツールが必要不可欠です。

クラウド戦略成功の秘訣

一部のアプリケーションやワークフローには、元々の性質上パブリッククラウドと相性の良いものもあります。そうでないワークロードは、はじめにパブリッククラウドでの運用を開始してから、規制、セキュリティ、または総所有コスト (TCO) 上の理由でプライベートクラウドに移動することもあるでしょう。パブリッククラウドに適したアプリケーションを探す際、クラウド管理者の一部は、複数のパブリッククラウドにわたる、双方向同期の可能な環境を求めます。それ以外では、相互運用性のあるデータ形式やデータグラビティの観点から、パブリックとプライベートどちらのクラウドが適しているかを検討する方法もあります。

ハイブリッドクラウド戦略を構築する上で注目が高まりつつあるその他の要素として、オンプレミス環境だけではなく、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方にコンテナを導入することが挙げられます。企業はハイブリッドクラウドに関する計画を立てる際、マルチクラウド対応のコンテナ・プラットフォームに着目する必要があります。

ワークロードに合わせたクラウド戦略を構築する際には、ケースバイケースの考慮事項を多数検討する必要があります。その際、豊富なコンサルティング経験を持つ、信頼できるパートナーの協力の有無が、長期的な成功と失敗を分かつ要素にもなり得ます。

 

クラウドではオープン性がさらに重要に

“You can check out any time you like, but you can never leave.”
(いつでもチェックアウトできますが、もう二度とここを離れることはできません)

これはイーグルスの名曲「Hotel California」の歌詞ですが、70 年代半ばに書かれたこの言葉には、現代のパブリッククラウドの性質にも通じる響きがあります。今、「オープン」であることがかつてなく重要となっています。一部のクラウド・プロバイダーがオープン・テクノロジーや業界標準のインタフェースを使用してパブリッククラウド・プラットフォームを構築しているとしても、それは必ずしも真のオープン・プラットフォームであることを意味しません。真のオープン・プラットフォームでは、移植性、移行、および異種混在環境がサポートされ、連続するハイブリッドクラウド環境へとワークロードを移動する場合にも法外な撤退コストがかからず、ロックインを伴わずにあらゆるアプリケーションをあらゆる環境にデプロイできます。このことに関して、Red Hat の製品・テクノロジー部門社長ポール・コーミアは、「half open is half closed (半分オープンということは、半分閉じているということである)」と指摘しています。

初期にもてはやされていたパブリッククラウドの利便性が、ロックインのリスクという現実で塗り変えられつつあります。Red Hat から企業の皆様へのアドバイスとしては、後戻りのできない状況に陥ってしまう前に、ワークロードに合わせたハイブリッドクラウド戦略を構築することをおすすめします。そして、ここでご説明した事柄を理由として、ハイブリッドクラウドとパブリッククラウドの区別が今後より明確化されていくものと、Red Hat は予測しています。1 年後の Google Trends レポートがこの予測を裏付けるかどうか、興味深いところです。

ハイブリッドクラウド戦略のはじめ方はこちらより詳しい説明はこちらでご覧ください。


執筆者紹介

Irshad Raihan is the Director of Product Marketing for Red Hat Cloud Storage and Data Services, responsible for strategy, thought leadership, and go-to-market execution. Previously, he held senior product marketing and product management positions at HPE and IBM for big data and data management products.

Raihan holds an MBA from Carnegie Mellon University and a Masters in Computer Science from Clemson University. He is based in Northern California.

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